初心者が学ぶ無人航空機

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農業ドローンによる農薬散布とは?機体・散布の仕組み・飛行申請の要点を整理

ソラタ

「農業ドローンって農薬散布専用なの?測量には使えない?」農業用途の特徴と飛行条件を整理します。

この記事の要点

農業ドローンによる農薬散布は、ドローンに搭載したタンクとノズルから農薬を圃場に散布する作業です。人力散布や有人ヘリよりも低コスト・省力化・精度向上が期待でき、水稲・畑作・果樹など多岐にわたる作物で利用されています。

農薬散布は航空法上の「物件投下」および「危険物輸送」に該当します。飛行には特定飛行の承認・認可に加え、農薬の適用登録と農薬取締法に基づく使用基準の遵守が必要です。

農業でのドローン活用は急速に拡大しています。農薬散布を中心に、肥料散布・種まき・圃場センシングなど用途は多様です。

ここでは農薬散布に絞って、機体の仕組み・法的位置づけ・飛行申請のポイントを整理します。

ザックリ言うと、「農業ドローンは農薬を積んで飛ぶため、危険物を運ぶ航空機と同じ扱いになる。農薬の登録と飛行の承認が両方必要」です。

農薬散布ドローンの仕組み

農薬散布ドローンは、農薬を入れるタンク・ポンプ・ノズルを機体に搭載し、飛行しながら圃場に農薬を噴霧します。主な構成要素は次の通りです。

  • タンク:農薬(希釈液)を貯留。容量は機体により5〜30L程度
  • ポンプ:農薬をノズルへ送る。流量を一定に保つことで散布ムラを防ぐ
  • ノズル:農薬を霧状に噴霧。散布幅・粒子径が散布精度に直結する
  • 流量計・散布コントローラー:飛行速度や高度に応じて流量を自動調整する機能を持つ機体もある

散布精度は「散布幅」「散布量(L/ha)」「飛行速度」「飛行高度」によって決まります。農薬の希釈倍率と散布量は農薬の使用基準(農薬登録に記載)に従う必要があります。

農薬散布に使われる機体形態

機体形態特徴主な用途
単一ローター型(ヘリ型)大型ローターで高い揚力。大ペイロード。ダウンウォッシュが強く農薬が葉裏まで届きやすい水稲・大規模農地の農薬散布
マルチローター機体構造がシンプル。取り回しがよく操縦難度が低い。近年急速に普及水稲・畑作・果樹など幅広い作物

単一ローター型はダウンウォッシュ(プロペラの吹き下ろし)が強く農薬が植物の内部まで浸透しやすい利点があります。マルチローター型はメンテナンスのしやすさと価格面で優れ、近年のシェアが大きい機体形態です。

農薬散布と航空法の関係

農薬散布は航空法上、次の2つの「特定飛行」に該当します。

  • 物件投下:農薬(液体・粒剤)を上空から散布する行為
  • 危険物輸送:農薬のうち毒性・腐食性を持つものは「危険物」に該当する場合がある

これらの特定飛行を行う場合、カテゴリーに応じた飛行承認・認可が必要です。多くの農薬散布は人がいない農地上空(カテゴリーⅡ)での飛行のため、二等無人航空機操縦士技能証明と飛行マニュアルの遵守が求められる場合があります。

農薬散布に使用される物件投下装置については、教則第4版(下図)でも説明されています。

物件投下のために装備される機器(農薬散布装置)(国土交通省 無人航空機の飛行の安全に関する教則 第4版 p.46):農薬散布ドローンの液体・粒剤散布装置の概要
出所:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則 第4版」(2026年2月)p.46 農業ドローンの物件投下装置:農薬散布ドローンは液体や粒剤を散布する物件投下装置を搭載している。物件投下装置は意図せず物件が落下しない構造が求められる。農薬散布(液体・霧状の散布を含む)は「物件の投下」に該当し、航空法上の承認または機体認証・技能証明が必要となる。

農薬の適用登録と使用基準

農薬取締法(農取法)により、農薬は農林水産省に登録されたものしか使用できません。ドローン散布に使用できる農薬は「無人航空機散布」の使用方法が登録されたものに限られます。

  • 農薬ラベルに「無人航空機による散布」の記載がある農薬のみ使用可能
  • 散布量・希釈倍率・散布時期はラベルの使用基準に従う
  • 登録外の農薬を散布すると農薬取締法違反となる

また、隣接する圃場への農薬の漂流(ドリフト)を防ぐため、風速・風向の確認と適切な飛行高度・ノズル選択が重要です。

飛行申請のポイント

農薬散布飛行を行うためのポイントを整理します。

  • DIPS2.0から飛行計画通報を行う(FISSへの入力)
  • 物件投下・危険物輸送に該当する特定飛行として申請
  • 飛行マニュアルの整備と遵守
  • 散布記録の作成・保管(農薬取締法の要件)

混同しやすい用語

物件投下:航空法上の特定飛行の一つ。農薬・肥料・種を空中から散布・投下する行為。

飛行承認が必要。

危険物輸送:航空法上の特定飛行の一つ。農薬のうち毒劇物に該当するものを機体に積載して飛行すること。

農薬登録(無人航空機散布):農薬取締法に基づく農薬の使用方法登録。「無人航空機による散布」の記載がある農薬しか使用できない。

ダウンウォッシュ:プロペラが生む下方への気流。農薬散布では葉の裏側への農薬浸透を助ける効果がある。

単一ローター型で特に強い。

学科試験対策|管理人の一言

農薬散布は「物件投下」と「危険物輸送」の両方に該当しうるという点が問われます。また「農薬登録(無人航空機散布)のある農薬しか使えない」という農薬取締法の要件も押さえておきましょう。

「単一ローター型のほうがダウンウォッシュが強い」という機体の特性も農業用途に関連して出題されることがあります。

一問一答

Q1. 農薬散布ドローンによる農薬散布は、航空法上どのような「特定飛行」に該当するか。

A1. 物件投下(農薬を空中から散布する行為)と、農薬の種類によっては危険物輸送(毒劇物等を搭載して飛行する行為)に該当する。

Q2. ドローンによる農薬散布に使用できる農薬の条件は何か。

A2. 農薬取締法に基づき農林水産省に登録され、農薬ラベルに「無人航空機による散布」の使用方法が記載されている農薬のみ使用可能。

Q3. 農薬散布に単一ローター型機体が使われる理由の一つは何か。

A3. 単一ローター型は大型のメインローターのダウンウォッシュ(下方気流)が強く、農薬が葉の裏面まで浸透しやすいため。

まとめ

農業ドローンによる農薬散布は、省力化・精度向上の観点から急速に普及しています。飛行には航空法上の物件投下・危険物輸送に係る承認・認可が必要であり、農薬の選択は農薬取締法の使用登録要件を満たす必要があります。

機体形態は単一ローター型・マルチローター型どちらも使われており、作物・規模・作業環境に応じた選択が必要です。

関連記事:危険物輸送・物件投下とは? ドローンによる圃場管理・精密農業とは? 物件投下の申請方法は?

参考資料

・測量法(昭和24年法律第188号)

・i-Construction(国土交通省)

・無人航空機の飛行の安全に関する教則(国土交通省 第4版)

この記事を書いた人

ソラタ

30代。二等無人航空機操縦士の技能証明取得を目指して勉強中。学科試験で詰まったポイントを整理してお伝えします。