ソラタ
「マルチパスってGNSSの誤差の一種?建物に反射すると位置がずれるの?」信号の反射による測位誤差の仕組みを整理します。
この記事の要点
マルチパスとは、GNSSの衛星電波が建物・地面・金属面などに反射して受信機に届く現象です。直接波よりも遠回りした反射波が混入することで、衛星までの距離計算にズレが生じ測位誤差を引き起こします。
高層ビルが林立する都市部や建物に囲まれた場所で特に発生しやすく、ドローンの位置保持精度に影響します。
GNSSの受信機は衛星から届く電波の「到達時間」から衛星までの距離を計算します。衛星から直接届く電波(直接波)だけなら正確に計算できますが、マルチパスが発生すると問題が起きます。
マルチパスでは、衛星電波が建物・地面・金属面などに一度反射してから受信機に届く「反射波」が、直接波と混在して受信されます。反射波は直接波より遠回りしているため到達時間が長く、距離計算にズレが生じます。
| 環境 | なぜ発生しやすいか |
|---|---|
| 高層ビルが多い都市部(アーバンキャニオン) | ビルの壁面が鏡面のように衛星電波を反射する。衛星からの直接波が遮られることも |
| 大型建築物・金属構造物の近く | 金属面や大きな壁面が電波を反射しやすい |
| 水面付近 | 水面が電波を反射する。池・川・海の近くでの飛行 |
| 谷間・断崖付近 | 岩壁が反射源になる。周囲を遮られた地形 |
| 影響 | 説明 |
|---|---|
| 位置保持(GPSホールド)の精度低下 | 測位誤差が大きくなり、機体が指定位置からズレて漂流する |
| 自律飛行の経路誤差 | ウェイポイント飛行で予定ルートからズレることがある |
| 急な位置ジャンプ | マルチパスが急変すると測位結果が突然大きく変わり機体が急移動することがある |
マルチパスがGNSS測位精度に与える影響については、無人航空機の飛行の安全に関する教則(下図)で整理されています。
| 対策 | 説明 |
|---|---|
| 開けた場所で飛行する | 建物・金属構造物から離れた場所を選ぶことでマルチパスのリスクを減らせる |
| 仰角の低い衛星データを除外する設定 | 低仰角の衛星ほど建物に遮られやすく反射波の影響を受けやすい |
| RTK(リアルタイムキネマティック)測位の活用 | 基準局との差分を使うことでマルチパス誤差を補正できる(産業用途) |
混同しやすい用語
マルチパス:建物・地面などで反射したGNSS電波が受信機に届いて測位誤差を引き起こす現象。
電波干渉:同じ周波数帯の別の電波が受信を妨げる現象。マルチパスとは原因が異なる。
電離層遅延:電離層を通過する際に電波の速度が変化して生じるGNSS誤差。マルチパスとは別の誤差要因。
DOP:衛星配置の幾何学的状態による測位精度の変化。受信衛星の数・配置が悪いとDOPが高くなり精度が下がる。
Q1. マルチパスとはどのような現象か。
A1. GNSS衛星の電波が建物・地面などに反射して受信機に届く現象。直接波より遠回りするため距離計算にズレが生じ、測位誤差を引き起こす。
Q2. マルチパスが発生しやすい環境を2つ答えよ。
A2. ①高層ビルが多い都市部(アーバンキャニオン) ②大型建築物・金属構造物の近く(他に水面付近・谷間なども正解)。
Q3. マルチパスがドローンの位置保持に与える影響を答えよ。
A3. 測位誤差が大きくなり、機体が指定位置からズレて漂流したり急な位置ジャンプが起きたりする。
マルチパスはGNSS衛星電波が建物・地面に反射して受信機に届く現象で、測位誤差の主要な原因です。都市部・金属構造物の近く・水面付近で発生しやすく、ドローンの位置保持精度に影響します。
飛行エリアを選ぶ際はマルチパスのリスクも考慮しましょう。
参考資料
・電波法(昭和25年法律第131号)
・無人航空機の飛行の安全に関する教則(国土交通省 第4版)
・総務省 電波利用ホームページ
※ この記事の制度確認日:2026年5月
学科試験対策|管理人の一言
「マルチパスが発生しやすい環境=高層ビルが多い都市部・金属構造物の近く・水面付近」という組み合わせを覚えましょう。「マルチパス=反射波が混入→距離計算がズレる→測位誤差」という因果関係を一行でまとめて理解しておくと応用が効きます。